著者は本田五郎。2023年7月25日 第1刷発行。
心に響いた言葉
はじめに
- 人生は誰にとっても一度きり
- 膵臓や膵臓がんに対する正しい知識や情報を仕入れておくことは決して無駄ではない。
第1章 体の奥底にあるちょっと危険なエネルギー管理司令塔
- 膵臓の役割は内分泌機能と外分泌機能がある。
- 内分泌機能は、インスリンなどのホルモンを生産分泌して血糖をコントロールする。
- 外分泌機能は、消化酵素を含む膵液を生産分泌して食べ物の消化を促す役割。
- 膵液は全消化液の中で飛びぬけて強力
- 膵液が膵管や十二指腸以外に漏れ出すと命を落とす危険あり
- ブドウ糖が増えると血糖値が上がる。
血糖値が上がるとインスリンが出て、全身にブドウ糖を取り込むように働きかける。
ブドウ糖が取り込まれれば、血糖値が下がる。 - 血糖値が上がるホルモンはグルカゴン以外にもいろいろある。
飢えの時期が長かったから、血糖値を上げるホルモンはいろいろある。
血糖値を下げるホルモンはインスリンだけ。 - ホルモン:体の様々な働きを調整する化学物質。ギリシャ語の刺激するという意味に由来する。
インスリン:ラテン語で島の意味。膵臓のランゲルハンス島から分泌されるペプチドホルモン。 - 糖尿病や血糖値の高い人はインスリンの手紙(ブドウ糖を取り込めという指令)が効きにくくなっている。
- 糖尿病が悪化したら膵臓がん発生の緊急通報かもしれない。
- 低血糖症状は極端な場合、意識レベルが下がる。
立ち上がった時に転倒する。
階段や駅のホームで転倒すると大事故になる。 - 膵臓は血糖値をコントロールする司令塔。
- 膵臓ではかなりヒヤヒヤものの危ない状況下で、外分泌機能の膵液、内分泌機能のホルモンを作っている。
第2章 膵臓の病気のこと、どれだけ知っていますか?
- 慢性膵炎とは、膵管で微妙な膵液漏れが発生して炎症を起こしている状態。
炎症を起こしているところを繊維化して修復する。
繊維化が進むと膵管が狭くなり、膵液の成分が固まって石になり、膵管上流で膵液がうっ滞して、膵管内の圧力が高まり、大きな膵液漏れや炎症が起こりやすくなる。
膵液漏れが起こると、膵臓がどんどん自己破壊していく。 - アルコールは膵臓に悪い。ただ具体的なところはわかっていない。
- 煙草も慢性膵炎にはよくない。
- 慢性膵炎があると膵臓がんの発症リスクが高くなる。
- 急性膵炎は膵液がアクティベートして起こる。活性化した膵液は分解力がレベルアップして、自分の組織をどんどん消化してしまう。主な原因はアルコールと胆石。
- 膵嚢胞はむずかしい・・・・
第3章 膵臓がんを知る
- 膵臓がんのリスクファクターは多量飲酒・喫煙・肥満・糖尿病。
発がん率は1.8倍になる。 - 早期発見の代表的な症状:黄疸(おうだん, 皮膚や目の白い部分が黄色くなる)・腹痛・背部痛。
- 黄疸の影響で尿の色が焦げ茶色になる。
- 黄疸・腹痛・背部痛が出たら、すぐに診察を受けること。
- 急に糖尿病になったり、糖尿病が悪化したら、膵臓がんを疑って、速やかに精密検査を受ける。
- がんには膨張性タイプと浸潤性タイプがある。胃がんの大多数が膨張性だが、スキルス性胃がんは浸潤性。浸潤性は進行が早く転移もしやすい。
- 膵臓がんはほとんどが浸潤性タイプ。
- 毎年の健康診断や人間ドックで膵臓がんを見つけることは困難。
腹部エコー検査では胃や大腸に隠れて膵頭部と膵尾部の一部しか見えない。 - 膵臓がんの検査:CT・MRI・内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)
- ERCP検査後、急性膵炎のリスクがあるため、極力避ける。
- 超音波内視鏡検査(EUS)は操作に高いスキルが必要。経験豊富な医師がいる医療施設が良い。
- もし膵頭十二指腸切除術を選択した場合、膵液漏れが一番起きにくい方法で手術を依頼すること。
膵液漏れを起こす確率の低い外科医を探すことが大切。 - 膵体尾部切除術は膵頭十二指腸切除術より難易度は低いが、膵臓を切り離すので膵液漏れを起こしやすい。
- 膵臓全摘出術は膵液漏れのリスクはないが、毎食事に消化酵素剤の服用と1日数回のインスリン注射が生涯にわたって必要。
外分泌機能を補うのが、消化酵素剤、内分泌機能を補うのがインスリン注射か・・・ - 膵臓は通常全体の20%しか働いていないので、膵頭十二指腸切除術や膵体尾部切除術で膵臓が小さくなっても、消化酵素剤やインスリン注射は不要な人が多い。
- 膵臓手術よりスムーズに安全に行うため開腹手術か腹腔鏡下手術か見極めが重要。
膵体尾部切除術は腹腔鏡下手術がおすすめ。
膵頭十二指腸切除術は開腹手術・腹腔鏡下手術ともに膵液漏れ発生確率が17~19%。
開腹手術では、膵臓と小腸の接合精度が上がったため、膵液漏れは5%程度まで改善した。 - 膵臓がんになって膵臓を切除するなら、開腹・腹腔鏡・ロボット、それぞれのメリット・デメリットを担当医と十分に話し合うこと。
第4章 膵臓がんを超早期に見つけて治す時代に
- 膵臓がんは画像で見つかるサイズになると、周囲に染み込んで広がり、遠隔転移している。
- 膵臓がんはステージ0で見つけると生存率は上がる。
- 膵臓がんは年2回の定期検査が必要。半年に1回の超音波内視鏡検査・その後半年のMRI検査。
主膵管の拡張や狭窄・貯留嚢胞・膵臓実質の萎縮や怪しいサインがないか確認する。
腫瘍の塊があれば浸潤がんの可能性あり。
塊がなければ上皮内がんの可能性あり。 - 大学病院に入院してSPACEを行い、異形が強い細胞を摂取して検査する。異常があれば手術を検討する。
- SPACEは連続膵液細胞診。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP検査)を使う。
急性膵炎を発症する可能性あり。
第5章 膵臓がんは焦って手術をしてはいけない
- 浸潤がんは手術だけでは治せない。
- 抗がん剤治療が有効。
- 抗がん剤は細胞分裂が盛んな組織や臓器に有効。正常な細胞にも影響あり。
- 膵臓がんの治療は1か月半の術前化学療法をしてから手術をするのが一般的となっているが、1か月の根拠なし。
- 最低でも3か月、できれば半年から1年経過を見た方が良い。
そうしないと手術すべきでない患者さんを選別できない。 - 8か月以上抗がん剤治療を継続した患者の方が膵臓がんを根治できる確率は高かった。
- 東京女子医科大学では、膵臓がんステージ1以上かつ切除可能と判断した膵臓がんに対して、3か月の術前化学療法を行っている。
- 東京女子医科大学では、腫瘍マーカーが下がらない限り、手術は行わない。術前化学療法を3か月から1年以上続けている患者もいる。
- 膵臓の大手術を受けて、日常生活を取り戻した矢先に再発を告げられる。肝臓や腹膜への転移。術前化学療法の必要性がある。
- ステージ1以上の膵臓がん:術前化学療法⇒手術⇒術五化学療法
- ステージ2以上の膵臓がん:基本的には半年の術前化学療法⇒手術すべきなら、化学放射線治療⇒8か月後に手術
- 東京女子医科大学の肝胆膵外科では、手術だけでなく、抗がん剤治療、緩和治療にも精通して、総合的に見る体制を整えている。
- 外科医である前に医師であり、医師である前に人であること。
おわりに
- 挫折感は、挫折を味わったことのある人しかわからない。
- 先輩の厳しい言葉で自分を見つめなおすことができる瞬間があった。
その他
- 1型糖尿病:インスリンが欠乏する疾患。膵臓全摘出術に似ている気がする。