著者は鎌谷直之。1999年12月6日 1刷発行。2001年6月22日 5刷発行。

心に響いた言葉

はじめに

  • 尿酸値が病的に高いことを高尿酸血症という。
  • 尿酸が体内に蓄積されると通風になる。さらに通風結節・尿路結石などの要因になる。症状が進むと生活習慣病などの合併症を引き起こす。
  • 高尿酸血症の原因は、体内で作られる尿酸の代謝異常にある。だれもがかかるごくありふれた病気”現代病”と言われている。
  • 通風の治療は、尿酸を薬によってコントロールすることが多い。セルフケアと共に生涯にわたって薬を飲み続ける必要がある。

第1章 尿酸値が高いとなぜいけないか

  • 尿酸は肝臓で合成される物質。窒素化合物の一種。古い細胞が分解される残骸やエネルギーの燃えカス。
    尿酸は体の中で毎日生産される。
  • 尿酸の原料になるのはプリン体と呼ばれる低分子化合物。
  • 古い細胞が死ぬと核酸は分解されてプリン体となって、体内に放出される。
    放出されたプリン体は肝臓で化学的に処理されて尿酸に合成されて体外に排出する。
  • プリン体はATPと呼ばれるエネルギー減になる物質の中にも存在する。
    ATPは代謝活動で分解されて一部が最終的に尿酸となる。
  • 食べ物から体内に入ったプリン体も最終的に尿酸に合成されて体外へ排出される。
    体内の代謝作用で生まれる尿酸の方が、飲食物のプリン体により算出される尿酸よりはるかに多い。
  • 肝臓で合成された尿酸は、最終代謝産物として、尿や便、汗とともに排出される。
  • 1日に算出される尿酸の量は平均して約600mg。ほぼ同じ量が尿や便で体外に排出される。
  • 体内には常に1200㎎程度の尿酸がプールされている。毎日半分ずつ入れ替わる。
  • 尿中に排出は400~800mg、便で排出は100~200mg。
  • 尿酸値が高い人は尿酸産生過剰型と尿酸排出低下型の2通りがある。
  • 日本人の場合は尿酸排出低下型が約6割を占める。尿酸産生過剰型が約1割、あとは両者の混合型が約3割程度。
  • 激しい無酸素運動やアルコール摂取によるエネルギーが大量に使われると、尿酸の元が分解して尿酸が増える。
  • 二次的な原因として、腎炎・高血圧・動脈硬化・糖尿病などにより腎臓機能低下して尿酸の排出能力が弱まると尿酸値が上昇する。
  • 女性は男性に比べ腎臓の尿酸排泄(尿酸クリアランス)が良好のため、男性より尿酸値が低い。
  • 血液中に安定して溶ける尿酸値の上限は7.0mg/dl。尿酸値が7.0を超えると、余分な尿酸が体のどこかに蓄積される恐れあり。
    過剰飽和状態が続いて結晶化が進めば、痛風や結石の原因になる可能性あり。
  • 結晶化した尿酸は針のような棒状をしている。針状の尿酸塩結晶が白血球に補足され、白血球を破壊して、関節中に激しい炎症を起こす。
  • 尿酸は体の老廃物だが、本当に体に不必要な物質かどうかは謎になっている。
  • 検診で尿酸値が8.0mg/dlを超える場合は、早めに専門医に診断を受けるの無難。
  • 高尿酸血症の大敵は肥満・大食い・アルコール・水分不足・過剰な運動。

第2章 尿酸値と深くかかわる病気

  • 高尿酸血症は原因が良くわからない一次性と原因が明らかな二次性がある。一次性が8割を占める。
  • 二次性は、腎臓病や血液疾患などの病気で尿酸値が上昇する。
    降圧剤や利尿剤、鎮痛や解熱作用があるアスピリン、ピラジナミドなど、結核の薬などで尿酸値が上昇する。
  • 通風結節は痛風発作を起こしているが治療を受けず5~10年ほどで起こる。手足の関節部付近や甲などの皮下や耳など比較的温度の低いところに発症する。触ると硬く痛みもない。放置するとどんどん大きくなる。
  • 通風結節ができる場合、尿酸値が慢性的に高い。通風が重いことを知らせるサイン。
  • 腎臓では最終的に10%程度の尿酸が尿中に排出される。
  • 腎臓内で複雑な経路をたどり、その多くが再吸収されるかは謎のまま。
  • 高血圧症は注意。降圧剤は尿酸値を上げる副作用のあるものがある。長期間飲み続けると腎臓に負担。

第3章 尿酸値を下げる食事

  • 肥満している人の尿酸値は標準体重の人より高い。
  • 標準体重の10%以上オーバー、BMI指数25以上は要注意。
    健康面で最も理想的と考えられているBMI指数は22。
  • 隠れ肥満も注意する。隠れ肥満は体重があまり多くないのに体脂肪が多い人のこと。
    男性は25%以下、女性は30%以下が望ましい。
  • 1日の総摂取エネルギーの目安は、標準体重 x 25~30キロカロリー。
  • 太っている人はせめて、標準体重の10%以内に体重を保つように努めないといけない。
  • 油は1gで9kcalある。焼肉もハンバーグも魚もステーキもできるだけ網で焼くことで余分な脂を抑えることができる。
    フライパンより網焼きにすると1割近くのエネルギーが低くなる。
  • 食事によるプリン体摂取が重視されなくなっている。
    ①尿酸コントロールする有効な薬が開発された。
    ②食べ物から摂取するプリン体の一部は、腸管内で分解されてしまう。
    ③食事に由来する尿酸よりも、体内で作られる尿酸の方がはるかに多い。
  • 高プリン体食品を必要以上に遠ざける必要はないが、控えるのが好ましい。
  • 尿酸値の高い人の合併症に高血圧がある。高血圧は塩分の過剰摂取も大きな要因である。
    塩分の多い食品は食べ過ぎないようにする。
    インスタント食品・レトルト食品・ハム・チーズ・かまぼこ・ちくわなど
  • 調味料を料理に直接かけずに小皿にとって、それをつけて食べると塩分を控えることができる。
  • 尿酸値の高い人は水分を十分に取って、尿量を増やして、対外排泄をスムーズにする必要あり。
  • 尿がアルカリ性になれば、尿酸が尿に溶けやすく、排せつされやすくなる。
    尿をアルカリ性にするためには肉食を控え、野菜や海藻をたくさん食べること。
  • 外食のラーメン・そば・うどんは塩分が3.2~6.4gあるので注意。
    1日の塩分摂取量は10g以下、8g以下が理想。
    ⇒外食した瞬間に1日の塩分摂取量は8gを超えるな・・・

第4章 尿酸値をコントロールする生活法

  • 有酸素運動はパワーは小さいが、ATP⇒ADP⇒ATP・・・ADPをATPに再合成して使用するため、あまり尿酸を排泄しない。無酸素運動はATP使い捨て型で、どんどん尿酸を放出する。
  • 1日の尿量は800~1000mlくらい。尿酸値が高い人は1日の尿量が2000ml以上になるように十分に水分補給する。
  • 下痢は要注意。水分不足になって、尿酸値が高い人は痛風発作を起こす危険がある。

第5章 痛風の検査と診断

  • 痛風と診断されたら、薬で尿酸値をコントロールするため生涯の治療が必要になる。
  • 痛風の症状は3段階で起こる。
    無症候性高尿酸血症:尿酸が体内に異常に溜まっているのに自覚症状なし
    間欠性発作期:ある日突然強烈な痛みが起こる。約7割が足の付け根に激痛が起こる。症状は数日から10日。適切な処置を行う必要あり。
    慢性痛風期:痛風が連続的に発生する。関節の内部だけでなく、からだのあちこちに沈着して結晶化した尿酸の塊ができる。痛風結節。
  • 痛風の発作は関節の1か所だけ起こる。2か所以上で痛風が起こることはほとんどない。
  • 正しい尿酸値は日を変えて何度か測定する必要あり。
  • 痛風と間違えやすい病気に慢性関節リウマチがある。慢性関節リウマチは2か所以上の痛みあり。ジワジワ痛む。手首や指の関節部など上肢がメイン。
  • 痛風と間違えやすい病気に変形性関節症がある。軟骨や骨を支える筋力が衰え、関節部が変形する病気。関節に負担がかかりやすい肥満の人に目立つ。
  • 他には外反母趾、仮性痛風などがある。

第6章 高尿酸血症と痛風の治療法

  • 痛風発作を一度でも経験すると、無症候性高尿酸血症と異なり、痛風発作を繰り返しやすく、尿酸塩結晶が体内で形成されていることを示す。
  • 痛風発作を経験した人は、まずは生活習慣改善により血清尿酸値が7.0mg/dlを下回るように努める。もし下がらない場合は薬物療法を行う。
  • 痛風発作を経験していない人は、すべての人が生活習慣改善を行う。8.0mg/dl以下にならない場合は尿路結石や高血圧症・動脈硬化症などがある場合、薬物療法を始める。9.0mg/dl以下にならない場合はすぐに薬物療法を始める。
  • 尿酸産出過剰型の人は、尿酸合成阻害剤を使用する。
  • 尿酸排泄低下型の人は、尿酸排泄促進剤を使用する。
  • 尿酸算出過剰型の人に、尿酸排泄促進剤を使用すると、尿中の尿酸濃度が上昇し、腎臓や尿管に尿路結石ができやすくなる。
  • 痛風では十分な水分摂取が治療の1つと言えないこともない。水分を多くとると尿酸の排泄量も増える。
  • 水分摂取量は1日2リットルが目安。
  • 尿をアルカリ性に保つと尿酸が溶けやすくなる。重曹やウラリットUなどのクエン酸製剤が併用される。
    クエン酸を飲むと体の中でアルカリ性に変わる。
  • ただしアルカリ性にするとカルシウム分が溶けにくくなって、カルシウム結石を誘発する可能性あり。
  • 知は力なり。病気に対する知識は、病気を予防し治療するうえで大きな礎になる。