著者はアンダース・ハンセン。2018年3月5日 初版発行。

心に響いた言葉

はじめに

  • この本のテーマ。身体を動かすことほど、脳に影響をおよぼすものはない。
  • 運動をすると、集中力や記憶力、創造性、ストレスに対する抵抗力も高まる。思考の速度が上がる。記憶も効率よく引き出せる。
  • 脳の機能を高めるには、戦略的に運動する方が、パズルや脳トレよりはるかに効果がある。

第1章 自分を変えるブレイン・シフト

  • 頭脳はプラス・マイナスがある。
    プラスは、記憶力がすぐれている、集中力がある、教育水準が高い、飲酒や喫煙に対する自制心が強い。脳が各領域としっかり連携している。
    マイナスは、かっとなりやすい、過剰な喫煙、アルコールや薬物依存など、脳内連携が悪い。
  • 脳の連携パターンを見れば、その人がどのような生活を送っているか、ほぼわかる。

第2章 脳からストレスを取り払う

  • 肉体に負荷がかかる活動は一種のストレス。運動するとコルチゾールの分泌量が増える。
    運動が終わればコルチゾールの分泌量は減り、ランニングを始める前のレベルに戻る。
  • ランニングを習慣にすると、走っている時のコルチゾールの分泌量は次第に増えにくくなり、走り終えたときに下がる量は逆に増えていく。
  • 定期的に運動を続けていると、運動以外のことが原因のストレスでも、コルチゾールの分泌量はわずかしか上がらない。
  • 運動を習慣づければ、脳のブレーキペダルが強化され、闘争か逃走かモードに入りにくくなる。
  • ウォーキングよりランニングの方が、肉体にある程度の負荷がかかる、不安やストレスを軽減する効果が高い。
  • 不安や悩み事で深刻な症状のある人こそ運動すべき。ただしパニック発作を起こした人は慎重に始めないといけない。
  • 運動はストレスや不安を消し去る本物の解毒剤。
  • 有酸素運動を少なくとも20分、体力に余裕があれば30~45分続ける。
    海馬と前頭葉の脳内ブレーキペダルが強化される。
  • 週に少なくとも2~3回、心拍数が大幅に増えるような運動をする。
    動機が激しくなっても、脳はそれが恐怖からではなく、プラスの変化をもたらすものであることを学習する。

第3章 カロリンスカ式集中力戦略

  • 脳がいらない情報を遮断することを選択的注意という。
  • 身体の負荷が多いほど、ドーパミンの分泌量も増える。ドーパミンの量を増やすためにはウォーキングよりランニングの方が適している。
  • 運動は集中力の改善にすぐれた効き目を発揮する副作用のない薬。
  • 最高のコンディションを手に入れたいのなら、常に身体を動かすことを心がけること。
  • わずか5分ほど身体を活発に動かすだけでも子供の集中力が改善され、ADHDの症状も緩和される。
  • ADHDの特性はサバンナのハンターにとっては強みになるが現代社会では問題視される。
    歩き回り、狩りをし、食べ物がなくなれば別の場所へ移動する生活のなかでは、じっとしていられずに思いつきで行動することが、行動力があって実測に判断を下すことと同じ意味からも知れない。
  • 集中力をあげるためには20~30分の運動を心拍数が(220-年齢)x70~75%で実施するのが良い。

第4章 やる気の最新科学

  • 不機嫌なら散歩に出かける。それでもまだ不機嫌ならもう一度、散歩に出かける。
  • 運動は抗うつ剤よりも効果が高い。ただし運動は莫大な利益をもたらさないので、薬のマーケティングに際限なく費用がかけられたため、運動がうつ病に及ぼす効果があまり知られていない。
  • 脳内最強物質はBDNF(脳由来神経栄養因子)。脳の天然肥料。
    脳の細胞間のつながりを強化し、学習や記憶の力を高めている。
  • 運動でBDNFが増やせる。心拍数がある段階まで増えると、BDNFが大量に生成される。
    有酸素運動をする。筋力トレーニングは同じ効果が得られない。
  • 有酸素運動のうち、インターバルトレーニングが効果がある。
    60秒激しく動いて、60秒休むを1セット、10回繰り返すトレーニング。
    フィットネスバイクがおすすめ。
  • 脳細胞がつくられないために意欲の低下が引き起こされる。うつ病になる。
  • 抗うつ剤によって脳細胞の新生を促すことができるが、運動ほど脳細胞の新生を促せるものはない。
  • 運動することでBDNFが生成され、そのBDNFが脳細胞の新生を促す。
  • 運動を定期的に行った人は幸福感が増すうえ、わずかだが性格も変わる。
  • 定期的に運動する人は皮肉っぽい気質や神経質な性格の人は少ない。
  • 人間の脳にはモルヒネを取り込む受容体がある。脳が自家製モルヒネを合成して取り込むことができる。
    体内で合成されるモルヒネは体内性モルヒネといわれる。エンドジーナス・モルフィン、略してエンドルフィンと呼ばれる。
  • エンドルフィンにはモルヒネと同様に鎮痛作用があり、多幸感をもたらす。
  • ランナーのエンドルフィンのレベルが、走った後に増えている。
    ランナーズハイの要因は、エンドルフィンと内因性カンナビノイドの両方が関与している。
    ただ歩くだけでは内因性カンナビノイドは分泌されない。45分~1時間ランニングを続ければ内因性カンナビノイドが分泌されて、ランナーズハイになる。
  • プチランナーズハイになるためには、30~40分のランニングを週に3回行うこと。最大酸素摂取量の70%の強度。息が上がる程度に負荷をかける。3週間以上続ける。

第5章 記憶力を極限まで高める

  • 脳の大きさは25歳ごろがピークで年齢とともに徐々に小さくなる。
    脳の細胞は一生涯作られ続けるが、死滅するスピードの方が速い。
  • 脳そのものは毎年0.5~1%ずつ縮んでいく。
  • BDNFの生産量が一番多かったのは記憶の中枢である海馬。
  • アルコールは加齢のスピードを加速させ、海馬を萎縮を早める。
  • 心拍数の上がる持久力系のトレーニングをすると海馬が2%成長していた。1年で2歳若返っていた。
  • 週に3回、40分、早足で歩いただけで、脳の老化を食い止め、若返り、記憶力まで強化される。
  • 運動するグループは記憶の中枢である海馬の血流量が増えて、海馬の働きが良くなり、記憶力が良くなった。
  • 暗記力を最大限に上げたいのなら運動と暗記を同時に行う。トレッドミルの上を歩きながら暗記する。
  • 身体を動かすと血流量が増える。血液が脳にたくさん流れ込む。記憶力が上がる。
  • 過酷な運動は脳や記憶力、少なくとも短期記憶にはマイナス面が多い。
  • 脳を鍛えたり記憶力を向上させたいのなら、ウルトラマラソンに参加するべきではない。
  • 運動やトレーニングをすると脳細胞が新生する。新しい体験を記憶に刻み付ける。暗記力が向上する。
  • フラボノイドは脳細胞の新生を促す効果がある。フラボノイドはポリフェノール。リンゴなどに多く含まれる。
  • 暗記力はランニング、連想記憶は筋力トレーニングに影響を受ける。
  • なんでも覚えてしまうには、有酸素運動と筋力トレーニングをする。顔と名前を一致させる連想記憶力は筋力トレーニングする必要がある。

第6章 頭のなかからアイデアを取り出す

  • 村上春樹は創作時に、毎朝4時に起床し午前10時まで仕事をする。昼食のあと10kmのランニングと水泳をする。あとは音楽を聴いたり、読書して過ごす。夜9時に就寝する。
    『走ることについて語るときに僕の語ること』
  • アルベルト・アインシュタインは自転車をこいでいるときに相対性理論を思いついた。
  • スティーブ・ジョブズはしばしば歩きながら会議を行った。テーブルを囲んで話し合うより、歩きながら意見を出しあう方が成果があると考えた。ウォーキング・ミーティング。
  • 歩きながらテストを受けた場合、5人に4人の割合で好成績を上げた。
  • 創造性が高まる効果は短時間で、1時間から数時間。その後は徐々に消えていく。
  • 視床は情報を取捨選択している。意識のフィルターとして働いている。
    現代の科学では、脳内で情報があふれてしまう現象を統合失調症の症状と考えられている。
  • 脳が強靭であれば、ドーパミンの量に問題があっても精神病にならず、むしろ独創的で創造性に富み、自由な発想がもたらされる。
  • 正しく意図して創造性を上げるには、脳内のあらゆる部位にアプローチできる運動が最適。
  • 仕事に行き詰まりを感じたり、よい発想がなかなか生まれないなら、今すぐ外に出て走ろう。
  • 20~30分走ると創造力が2時間ほど高まる。

第7章 学力を伸ばす

  • 子供の記憶力や学習能力を驚異的に伸ばす方法として科学の研究が立証したものは身体活動
  • 大人が運動すると記憶の中枢で感情の制御をしている海馬が成長する。子供でも同じことが起こる。
  • 9歳児が20分運動すると、1回の活動で読解力が格段に上がった。
  • 10代の子供たちが12分ジョギングしただけで読解力と視覚的注意力が向上して、1時間効果が続いた。
  • たった4分の運動を一度するだけで、集中力と注意力が改善された。
  • 子どもが潜在的な能力を存分に発揮するためには身体を活発に動かさなくてはならない。
  • 学力を上げるのは心拍数。1分間で最大150回まで上がる運動をする子供たちは試験の成績がよかった。
  • 小学校に通う学童期が最も運動の恩恵を得られる。
  • 学校でも職場でも立って作業すると脳は効率よく働く。集中力・ワーキングメモリー・認知制御の能力が向上した。テストの結果が平均10%上がった。認知制御は高次の思考によって衝動を抑え込む働き。
  • 知能指数の高さと相関性があったのは持久力のみで、筋力とは無関係だった。
  • 頭を良くするためには、タブレット端末やスマートフォンを置いて、もっと身体を動かす。
  • このことが一般的に知られていないのは、運動がうつ病に及ぼす効果と同じく、お金が儲からないから。
    薬やサプリメント、コンピュータゲーム、認知トレーニングと違い、遊びやウォーキング、ランニングのような活動には費用が掛からない。
  • 学校の休憩時間には、ほんの数分でも外に出て遊ぶことが大切。10~40分運動をするだけでワーキングメモリーや読解力が向上する。心拍数を150回前後に上げると脳の効果が高くなる。
  • 大人になってから外国語の発音を習得するのは至難の業。語学の下地が残っている子供の時こそ、外国語を発音まで含めて本当の意味でマスターする絶好のチャンス。子供はだれでも小さな言葉の天才。

第8章 健康な頭脳

  • 世界最高齢のマラソンランナー、ファウジャ・シン。よく身体を動かす。毎日4時間歩いたり、ジョギングしたりランニングしたりして過ごす。心と体はいつもハツラツ。
  • 運動が脳の老化を食い止める絶大な力がある。運動を習慣にしている人の海馬は萎縮せず、むしろ成長する。
  • 3人に1人が脳の老化や海馬の萎縮を早め、知的能力の衰えを促す遺伝子を持っている可能性がある。
    パイロットの1/3は年々技能が2倍の速度で低下している人がいた。
  • 脳内のBDNFを確実に増やす方法は運動。脳や知性の老化を食い止める。
  • 認知症は記憶の力が弱くなっている。記憶の力を強化することが重要。
  • 毎日、意識的に歩くと認知症の発症率が40%減らせる。週に5日で十分。
  • 認知症を本当に心配した方がいいのは、祖父母や両親に認知症患者がいる人より、あまり身体を動かさない人。
  • 認知症の一番のクスリは歩くこと。
  • 歩くことは毎日クロスワードパズルを解くよりはるかに効果があり、認知症を防ぐだけでなく、認知機能すべての衰えを防げる。
  • 紙の前に座っているより、動き回っている方が、脳の活動量がずっと大きい。
  • 認知症のリスクを減らすには、ウォーキングか軽いジョギングを週に150分、または30分ずつ週5回行う。20分のランニングを3回でもよい。
  • 長寿地域のブルーゾーンは、イタリアのサルデーニャ、日本の沖縄、コスタリカ、スウェーデンのスモーランド地方にある。
  • ブルーゾーンの特徴は、小さなコミュニティーか離島、住民たちは強い絆で結ばれ、何世代かが同居している。1人暮らしはほとんどいない。飽食せず、栄養不足にならない程度の質素な食事、非常によく身体を動かしている。

第9章 超一流の頭脳

  • 地球上に初めて現れた脳細胞の最も大切な仕事は、その生物を移動させること。
  • 身体を動かさなければ、そのためにできている脳も機能できない。
  • 運動によって生成されるBDNFが脳を成長させ、脳細胞の新生を加速させた。
  • 祖先の生存の可能性を増やした行為と同じこと(狩り、危険な猛獣から逃げる、住みやすそうな場所を探す⇒体を活発に動かす)をすれば、脳はそれを繰り返させようと快感(ドーパミンを放出)を与えてくれる。

第10章 一流の頭脳マニュアル

  • 最低30分のウォーキング
  • 週3回のランニングを45分以上
  • 筋肉トレーニングよりも有酸素運動
  • 週に数回の運動を半年続けると目覚ましい変化がある