著者は土井義晴。2016年10月25日 初版第1刷発行。
心に響いた言葉
今、なぜ一汁一菜か
- 食事のことをちゃんとしていることは親孝行。
- 台所を掃除して、きれい好きでまめにやっているとわかれば、子供はうれしい励みになる。
暮らしの寸法
- 脳が喜ぶおいしさと、身体全体が喜ぶおいしさは別物。
- 日常は常に冷静でいることが望ましい。日常を高めるという総合的な質を考えている。
慎ましい暮らしは大事の備えと言われている。 - 淡々と暮らす。暮らしとは、毎日同じことの繰り返し。
毎日同じ繰り返しだからこそ、気づくことがたくさんある。
その気づきはまた喜びになる。 - 地元の野菜は効率が悪い、形がそろいにくいという理由から流通にのらない。
鮮度がよくて、比較的農薬も少なく、健康価値が高い。だから味が良い。
地産地消を心がけるだけでも暮らしは変化する。
毎日の食事
- 生きることの原点となる食事的行動には、様々な知能や技能を養う学習機能が組み込まれている。
- 自分自身を大切にしたいと思うのなら、丁寧に生きること。
- 料理は愛情。
- 料理を作ってもらったという子供の経験は、身体の中に安定して存在する安心になる。
- 急いで作るおかずはいつもの定番、いつも同じものでよい。
- 自分で料理をすれば、自分と家族を守ることができる。食に対して責任を持つことができる。
- 食べることは生きること。
良く食べることは良く生きること。
食べているものから、どういう人間なのかがわかる。 - 大きな問題に対して、できることはよき食事をすること。
- 米を洗って水気を切って40分ほど吸水させる。
時間がないときはあらかじめ洗って、ポリ袋に入れて冷蔵庫に保管する。
作る人と食べる人
- 家庭料理は無償、素朴で地味なもの。目的は自分と家族の健康。
- 小さな変化に気づけること。もの喜びできる人。
- もの喜びとは感動できること、幸せになること。
人の愛情や親切に気づくことができること。
愛情を感じる能力。 - もの喜びとは、小さな変化に気づいて喜んで褒める様子や、喜んでくれる人に対して嬉しいと感じること。
- 良い食品とは、環境に悪影響を与えない、生産者にとっても、消費者にとっても有益で、自然のように循環して持続可能であること。
人を傷つけることの決してない、命を養う食品。
おいしさの原点
- 2013年12月、和食がユネスコの世界無形文化遺産に登録された。
- はしりもの、さかりもの、なごりもの
交差する生命の始まりと終わりを五感で感じ、意識すると季節の移ろいの中にある滋味を感じる。 - はしり=採れ始めの旬というには早いくらいの時期。新物。
さかり=まさに旬まっただ中で、味も一番美味しい時期。
なごり=旬の終わりで、去ってしまう旬を名残惜しみつつ食べる時期。 - 和食の調理は濁りを嫌って、きれいに澄むことが大事。
物事がうまくいけば、澄みました。
うまくいかなければ、澄みません。 - 家に帰れば、手を洗い、料理をする前に手を洗い、食事の前にも手を洗う。
外から中に入るとき、神を祀る家に入るけじめとしている。 - お料理と人間の間に箸を揃えておくのは、自然と人間、お天道様から生まれた恵と人間との間に境を引いている。
いただきますという言葉で結界を解いて食事を始める。 - 酒や味噌の醸造など、通常、人間が作り出せないものだけを造ると書く。
刺身だけお造りと書く。魚を神と信じ、魂をお返しして肉を恵みとしていただく。古代の人の心。 - きれいという意味は美しいだけではなく、清潔という意味が含まれる。
正直な仕事をきれいという一言で表す日本人。
和食を初期化する
- 玄関で脱いだ履物は必ずそろえる。
- 家に帰ったら手洗いをする。
- いただきますとごちそうさま。
背筋を伸ばして食べる。 - お膳の布巾ととお茶碗の布巾を区別する。
- おかわりのお茶碗は両手で受け取る。
- お茶碗にお茶を少し入れる。
- 楽しい家族の食事の中にもいろいろしつけがあった。
- 左清右濁
ご飯は左側、味噌汁は右側に置く。
清らかなものは左側、濁ったものは右側に置く。 - 職人は目に見えない裏側まできれいに仕上げるのが当たり前。
裏の仕事が表に現れるのを知っていた。 - ハレとケを区別して、ケの日常は慎ましく、必要最小限の食事で暮らすことが心身ともに心地よいことを身体は知っていた。
- ケ=正式でないこと。日常的なこと。ふだん。
- 晴れ=表立って晴れやかなこと。おおやけのこと。また、そのような場所。
- 日本らしさを失わないためには、暮らしの中に情緒を豊かにして、維持する仕組みを持つこと。
暮らしの基本をもつこと。
暮らしの要となる食事に和食の型を持つことが大切。 - 和心・漢魂・洋才
- 和心:自然の素材を生かし、常に調和しようという心
漢魂:素材を混ぜ合わせるちらし寿司などのハレの料理。日常の中でも油を使う大陸的調理法。
洋才:背景に西洋の哲学があるもの。 - 本物であるための大切なことは、文脈に乗る。本質に添うこと。
一汁一菜からはじまる楽しみ
- 毎日食べるものは白いごはんと具だくさんの味噌汁。
- 一汁一菜の型をきれいに整える。きれいな三角形に整えること。
- お盆に載せて食べるべきなのか?
- お茶碗は毎日手に触れるものなので、いいものがよい。人間は道具に美しく磨かれることもある。
- 自分のお茶碗や湯呑、お箸と決められるものを属人器という。
- 1年前の自分はわかっているつもりだったけれど、実は何もわかっていなかった。それがわかるのが成長。
- 買ってもらった新しいお茶碗はすぐにはおろさないで、お正月まで我慢する。
楽しいことを待つという嬉しい時間があった。 - 知り合いの家に訪れて、ハッと気づいたことを口にすることは良いこと。
その心がけそのものが喜ばれること。 - 1人で食事をするとき、お膳は縁が場の内側と外側を区別して、結界になる。気持ちよく食事ができて、だらしなくなくなる。
- 二十四節気は、日本の細やかな季節感がわかりやすい。
- 季節の楽しみを食べるときは、一言添えること。
- きれいなものは誰にでも作れるし、作っても良い。美しいものはどこにでもある。本当に美しものはお天道様が示すもの。
- お天道様=太陽を敬い親しんで呼ぶ言葉。
- 一汁一菜の食事スタイルで家庭料理を作る。汁飯香(しるめしこう)。
- 余裕のある日は季節のおかずを作る。料理をする幸せがわかる。食べる人の笑顔が見える。
- お客さんを招く。器を選んで盛り付ける。
- 和の食文化が子供たちに伝え残すことになる。